私たちが大切にするべきものは何だろう? 大切にするってどういうこと? 日々を綴る中で、片鱗に触れられたら幸せです。

台所の一幕

お盆は南島の祖父母宅で過ごすこととした。

13日、台所の一幕。
電気ポットとIHが気にくわない私は、パソコンで仕事をすると称して、電気ポットのコンセントを抜いた。
「なるべく電気を使わないようにしたいんだ」
という私に向かって、祖母が投げた言葉は
「暑いときはエアコンもいる。電気はじゃんじゃん使ったらええ。」
私は、フリーズした。
3.11以降、節電やら原発の脅威やら暗黙の了解のような気がしていた。少なくとも私の周りは…。
だいぶ落ち込んだけど、ここで説得させたい訳じゃない。ちょっとくらい、話をしてわかってもらえるものじゃない。一緒に住まなきゃ、何を言おうが説得力はない。

ご老体の独り暮らしで、近くにスーパーも病院もない、そんな祖母が、どんな思いで生活をしているかなんて、私がわかるはずがない。

私は、ただできることをするだけ。

はたと、じゃがいもを掴んで洗い始めた。

「おばあちゃん,サラダ作っていい?冷やしておいたら明日食べられるでしょう。」
「食べるよ。そしたらお願いしよかな。きゅうり、人参もある。ハムもある」

祖母が勢いよく、冷蔵庫から食材を出してくる。見つけた玉ねぎも仲間に入れて、添加物いっぱいのハムさんは、ちらりと表示だけ見て、こっそり冷蔵庫に戻した。

「おばあちゃん、七色汁の準備もする?」

七色汁は、お盆時期に仏様にお供えするために作る、お味噌汁だ。人参、ごぼう、なす、インゲン豆、冬瓜、カボチャ、枝豆を小さく切ってお味噌汁に入れる。

「それならやって」
祖母のゴーサインを確認して、全ての食材を小さく切り揃えた。
ポテトサラダ用のじゃがいもが湯だったので、他の野菜とマヨネーズで和えた。湯だって温かいうちにお酢と砂糖を少し入れるのが私流。昔、食堂をしている親戚のおばさんに教えてもらった。

そうやって少しずつ、生活に近づいていくしかない。去年はお盆の作法も何も知らなかったから、任せてもらえることも少なかった。今は、以前より主体的に生活を回す場面も増えている。

少しずつ、少しずつ…。