ムスメ、偕楽亭デビュー。
お酒がさほど好きなわけではないけど、
飲みの席は大好き。
オープンで、
分け隔てなくて、
初めて会った人とも
仲良くなれてしまう。
海外に行って、
なんの肩書きもなく
ただの私になれる、
そんな感覚と似ている。
南伊勢町棚橋の偕楽亭。
大阪でバーテンをしていた粋なおじさまが一発奮起、
ふるさとに想いを寄せて開いたお店。
過疎地の中の過疎集落、
街灯のない真っ暗な夜、
鹿の声が遠くで響くだけの静かな夜、
偕楽亭だけが賑わっている。
地元の漁師さんや大阪の仲間が
わいやわいや、
いい顔をして杯を交わす。
「あんたの旦那はヒーリングでやけどなぁ、僕はお酒の力で緩めるんや。ホッとリラックスする。方法は違うけど、目指すところは一緒なんやで。」
そんなことをつぶやきながら、
地元であがった新鮮な魚を出してくれた。
向こうの席の恰幅のいい兄ちゃんが、
常連の漁師さん。
「ごちそうになりまーす」
と言って、旦那さんとニコニコ食べる。
隣で寝ている娘を
出来上がったばかりの地元のおじいちゃんが、
「かわいいなぁ」
とのぞき込む。
突然しゃべり始めた娘の声を聞いて、
漁師さんが
「赤ちゃんの声は癒されるなぁ。」
とつぶやいた。
知ってか知らずか、
娘はありのままで周りを緩めている。
オープンで、
分け隔てなくて、
ただの私で生きている月齢3ヶ月、
酒場デビュー。