私たちが大切にするべきものは何だろう? 大切にするってどういうこと? 日々を綴る中で、片鱗に触れられたら幸せです。

台風と教養と。

今日は午前中からひどい風雨だったので、雨戸を閉めました。紀伊半島は台風の通り道なので、小学生の頃からこの時期は休校やら早帰りは想定内でした。千葉に住んで、雨戸がなかったことにびっくりした記憶があります。


ということで読書日和と割り切り、図書館で借りた『池上彰の教養のススメ』を読みました。

東工大に設置されたリベラルアーツセンターを拠点に、大学教育のみならず、生きていく上で教養が大切であることを池上彰さんと教授陣が対談したものです。専門学科とは対照的に教養はすぐには役に立たない、と言いつつ、一生役に立つものだし、社会を機能させたり、新しいルールを作ったりするには欠かせない。例えば哲学がダムの対立問題を解決したりする。日本の技術をリードする東工大生こそ、幅広い教養を身につけてほしい、と。


私が大学時代に所属していたロシア政治のゼミでは、毎週一冊岩波新書の新刊を、ジャンルを問わずに読む読書会をしていました。ロシアの話は一割くらいで、各国の社会情勢についてや文学、冬眠や琵琶法師、ウナギなど…これでもかというくらい幅広いテーマを扱っていました。その中に人生のエッセンスが詰まっていて、先生は言葉の端々から人間の癖や痛切な思いをそっと削り出して見せてくれる。すると政治や社会という抽象的なものが、あぁそうか、と実感をもって入ってくるのです。言葉や科学の限界を知ったのもここ。世の中、多くは合理性とはかけ離れたことで動いているのだということも。社会に出て、辛いときや理不尽な思いをした時に支えになったのは、中村先生の言葉です。

このゼミが私にとっては教養の原点です。直接役に立たなくても、生きていく上で一生役に立つ教養。素晴らしい土俵に乗せてもらったなぁと感謝しています。いつか、教養を身につけるゼミを企画したいなぁ。