命と麦畑と。
ずっと観たいと思っていた新藤兼人監督の最後の映画「一枚のハガキ」のDVDをレンタルしました。
当時98歳だったという監督が、どうしても作品にしなければと、製作されたもの。撮影現場で歩くのも精一杯の監督が、自身の体と限られた予算や撮影時間と闘いながら、なお伝えねばと挑んだテーマだと思うと、受け取る側も真剣に向き合わざるを得ません。
戦争をどう伝えるか難しいけれど、「戦争は悲惨だ」という結論で終わることは避けようと決めていました。人が飢えたり殺されたりすることを望んでなどいないのに、いつの間にか一般人が被害者や加害者になっていく戦争。戦争を非難するだけではなく、過去の出来事として捉えるのではなく、今、ここにいる私から始めるヒントを探そうと。
そんな思いで観はじめた映画ですが、服務がくじ引きで決められ、あっけなく家族の命が奪われていく展開にギョッとしました。戦争の大義名分の下、命はコマでしかない。
それに比べ、麦畑を開墾し、麦を脱穀し、口に運ぶまでの工程はなんと地道で根気のいることか。
生きることや食べることは本当に大変なことなのです。
だけど、水汲みのような日常場面の中から人の温かみや滑稽さが匂ってくる。それが、きっと生きる実感であり、喜びなのだろうと思うのです。気力や希望も、そんな中から湧いてくる気がします。
そんな意味で、とても素晴らしい映画でした。
戦争反対から平和を担う、へ。
そして少しずつでもそういう人を増やしていけるように。